真央ちゃん、あなたは最後の最後まで浅田真央だったね
それは突然のことでした。
月曜日の夜の、美容室で働く者にとっては
一週間のうちでもっとも
ゆるみきっているひと時のことでした。
ニュース速報で
『浅田真央選手、現役引退』
のアナウンスが入りました。
え!?
何かの間違いじゃなくて!?
まさか。
確かに昨年のシーズンは
成績も振るわず、世界選手権も出れませんでした。
でも、復帰した時に
「現役としてやるなら平昌を目指す」
と浅田選手自身が言っていたこともあり
完全に来シーズンもあるものだと安心していました。
浅田選手が、自身の身体の不調、故障を
一切口外しないことは知っていましたが
それをいいことに、安心しきっていた自分がいました。
腰と、膝がそんなに限界だったなんて
想像していなかった。
いや、考えたくなかったのかもしれません。
リンクの上から
浅田選手が去る日が来るなんて
考えたくなかったから。
昨日の火曜日は
朝からどのTV局も
浅田真央選手引退の特別報道態勢でした。
ソチオリンピックショートプログラム
16位の結果に心が折れそうになって
神様を恨んで過ごした、あの日以来の
喪失感でした。
昨日は結局一日中
TVの前から離れられず
真央ロスに打ちひしがれていた一日でした。
でも、先ほど
引退記者会見の動画を拝見して
心が晴れやかになりました。
浅田真央選手が
まだ、若いころにインタビューで
応えていた言葉があります。
「浅田真央からは逃げることはできないから」
前後の内容までは覚えていませんが
まだ二十歳を過ぎて間もない
浅田選手からそんな言葉が出るなんて
見た目の無邪気さと打って変わって
なんてしっかりとした自分を持っているんだろう。
と、驚いたことがあります。
フィギュアスケートは採点競技であるがゆえ
完璧な順位付けは不可能だと私は思っています。
まして、ジャンプの難易度のみならず
そこに、芸術的要素を考慮して
加点していくとなると
もはや、審判の採点のさじ加減一つで
どうにでもなってしまう競技ですから。
バンクーバーで銀メダルに終わった後すぐに
ジャンプの見直しを始めた浅田選手。
自分の欠点に目を背けることなく
真正面から立ち向かった浅田選手。
跳べてたジャンプも跳べなくなり
マスコミは一様に浅田真央不調と流しまくる。
あの頃、浅田選手がなぜジャンプが跳べなくなって
失敗続きなのか、きちんと報道してくれた
マスコミはほとんどなかったように記憶しています。
私たちファンは
浅田選手の覚悟を知っていたから
ずっと待っていました。
浅田選手が納得のいく演技ができる
その日が来るのを信じて。
女子では誰も組むことのできない
世界最高難度のプログラムを
いつかきっと、浅田選手は、やり遂げてくれると。
そして、あのソチのフリープログラムです。
全6種類8回のトリプルジャンプ
あの当時、いやおそらく今でも
8トリプルをプログラムに組み込める
女子選手はいないのではないでしょうか。
なぜなら、3アクセルを跳べる
跳び続けられる
女子選手がいまだ出てこないから。
浅田選手はもう10年も
3アクセルジャンプを
跳び続けていたんですね。
そう考えると、膝はもう限界を超えて
いたのでしょう。
左脚の膝は、アクセルジャンプの要です。
彼女は気力がなくなった、と
表現していましたが
膝が、腰が、もう限界だったのでしょう。
それでも、
「平昌を目指すと一度宣言したから
引退を決意するまでに時間がかかった」
と、会見で言っていました。
本来なら、もっと早くリンクを
降りるべきだったのかもしれません。
目標を必ず達成してきた
達成することを自分に
課してきた浅田選手だからこその
無理を押し通した1年だったのでしょう。
マスコミはすぐに
キムヨナ 対 浅田真央
という構図で報道しますが
浅田選手は、もちろん
キムヨナ選手をいいライバルだと
思ってはいたでしょうが
闘っていたのは
一貫して
浅田真央という
自分自身、唯一無二の
スケーターだったのだと思います。
そして、
自分自身で
もういいかな、と。
フィギュアスケーター浅田真央と
闘うのは終わりにしよう、
と思ったのだと思います。
調子のいい時も、悪い時も
どんな時も隠すことなく
私たちの前で
フィギュアスケートを
披露してくれた
浅田真央選手。
私たちファンは
あなたがメダルをとる実力があるから
強いから
好きなのではなく
あなたが
浅田真央だから好きなのです。
どんな時でも
逃げずに、前を向いて
闘う姿に
魅かれたのです。
そのひたむきなまでの
あなたの人生そのものに
魅かれたのです。
今は亡き浅田真央選手のお母さまが
「フィギュアスケートには滑る人の人生が出る」
と、おっしゃっていたそうですが
まさに、浅田真央選手の生きざまが
スケーティングに現れていたのだと思います。
そこにはもはや国境をも越えて
世界中の人々の心に訴えかける
点数では表せないものが
存在していたのだと思います。
きっとリンクを降りても
そのあなたの生きざまは
変わることはないのでしょう。
今までずっと応援できたこと、感謝しています。
本当にありがとう。
そして、これからの人生も
もっともっと輝くことを一ファンとして
心よりお祈り申し上げます。
今は、ゆっくりと身体を休めてください。
あなたの稀有なそのアスリート魂は
きっと若い世代に受け継がれていくことと思います。
いえ、私みたいな50のおばさんにさえ
とてつもない勇気と力をくれました。
オリンピックの金メダルよりも
ずっと尊いものを示し、残してくれた
浅田真央選手に感謝と敬意をこめて。
2017年 4月 12日
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